大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第二小法廷 平成2年(あ)491号 判決

主文

原判決及び第一審判決を破棄する。

被告人を免訴する。

理由

職権をもって調査すると、原判決は、業務上横領(刑法二五三条)の事実を認定した第一審判決を破棄した上自判し、横領(同法二五二条一項)の事実を認定して被告人を懲役八月、三年間執行猶予に処したものであるが、右横領罪の法定刑は懲役五年以下であるから、犯罪行為の終わった時から五年の期間を経過することにより、その公訴時効が完成するものであるところ(刑訴法二五〇条四号)、本件につき公訴の提起があったのは、被告人の右犯罪行為後五年二箇月余を経過した昭和六一年三月七日であり、原審が横領の事実を認定した以上、右行為については、右公訴の提起の当時既に公訴時効が完成していたものと認められる。そうすると、原審としては、第一審判決を破棄して被告人に対して免訴の言渡をすべきであるのに、有罪の言渡をしたのは、法令の適用を誤ったものであり、この誤りは判決に影響を及ぼし、原判決を破棄しなければ著しく正義に反するものと認められるから、刑訴法四一一条一号、四一三条但書、四一四条、四〇四条、三三七条四号により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 中島敏次郎 裁判官 藤島昭 裁判官 香川保一 裁判官 木崎良平)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例